重要なポイント
- モンゴルの料理と食文化は、家畜から得られる乳製品と肉が二本柱。2025年末時点で国内の家畜は5,810万頭に達している。
- ボーズ(蒸し餃子)とホーショール(揚げ餃子)は、どの食堂でも出会える定番料理。
- ホルホグやボードグは、焼いた石を使って肉を蒸し焼きにする遊牧民ならではの調理法。
- 馬乳酒アイラグはアルコール度数が低く、夏の遊牧民キャンプで味わえる発酵飲料。
モンゴルの料理と食文化は、広大な草原で暮らす遊牧民の生活から生まれました。家畜から得られる乳製品と肉を中心に組み立てられ、厳しい冬を越すための知恵が一皿ごとに詰まっています。この記事では、乳製品を軸とした食の考え方、ボーズやホーショールといった定番料理、石を使った豪快な肉料理、そして馬乳酒まで、旅行中に実際に味わいたい伝統の味を順に紹介します。
遊牧民にとって食事は、季節と家畜のリズムに沿うものです。夏は乳製品が豊富になり、冬は貯蔵した肉が食卓の中心になります。この季節感を知っておくと、現地での一食がぐっと味わい深くなります。
乳製品を中心とした遊牧民の食文化
モンゴルの料理と食文化を理解する出発点は、乳製品にあります。遊牧民は羊、山羊、牛、馬、ラクダといった五畜を飼い、その乳を余すところなく利用してきました。2025年末時点で、モンゴル国内の家畜は5,810万頭に達しています(新華社、2025年)。家畜の規模がそのまま食文化の豊かさを支えています。
夏の草原では、搾りたての乳からさまざまな加工品が作られます。「ツァガーン・イデー(白い食べ物)」と総称される乳製品は、固いチーズのアーロールや、乳皮のウルム、発酵乳のタラグなど種類が豊富です。保存がきくため、乳の少ない冬場の貴重な栄養源にもなります。
同じ新華社の報道によれば、モンゴルの遊牧人口の約40%が畜産業で生計を立てています。食と暮らしが分かちがたく結びついている国だと言えます。
草原を旅するなら、まずはゲルを訪ねて乳製品をいただくのが定番です。搾りたての乳から作る白い食べ物は、遊牧民のもてなしの中心に位置づけられています。

ホーショールやボーズなど定番料理
旅行者が最初に出会う機会が多いのが、ボーズとホーショールです。どちらも小麦粉の皮で挽き肉を包んだ料理で、食堂でも家庭でも親しまれています。見た目は似ていますが、調理法と食べる場面が異なります。
ボーズは蒸し餃子にあたる料理です。羊肉や牛肉の挽き肉に少量の玉ねぎやニンニクを混ぜ、小麦粉の皮で包んで蒸し上げます。旧正月のツァガーンサルには山のように積み上げて振る舞う習慣があり、祝いの席に欠かせません。
ホーショールは、同じ具を薄く大きく伸ばした皮で包み、油で揚げた料理です。外はパリッと、中からは肉汁があふれます。ナーダム祭の屋台でもおなじみで、歩きながら頬張る旅の味として人気があります。どちらも手で持って食べられるため、移動の多い遊牧生活に適した料理だと言えるでしょう。
家畜の肉を使った伝統的な調理法
モンゴルの肉料理で最も特徴的なのが、焼いた石を使う調理法です。ホルホグとボードグは、遊牧民の暮らしから生まれた豪快な蒸し焼き料理として知られています。祝い事やもてなしの席で登場する、特別な一品です。
ホルホグは、金属の缶に羊肉と野菜、そして火で熱した石を交互に入れ、密閉して蒸し焼きにします。石の遠赤外線で肉の内側からじっくり火が通り、独特のやわらかさが生まれます。食べ終わったあとに熱い石を手に取ると、健康に良いと言い伝えられています。
ボードグは、ヤギや羊の皮の内側に肉と石を詰め、外から直火であぶる調理法です。内臓を取り出した体内で蒸し焼きにするため、手間がかかる一方で、特別な日のごちそうとして受け継がれてきました。モンゴルの冬はきわめて寒く、脂肪分の多い羊肉がエネルギー源として重宝されます。
こうした手間のかかる調理は、家畜とともに移動する遊牧生活のなかで、特別な日を彩る料理として受け継がれてきました。寒さの厳しい土地だからこそ、脂肪分の多い肉が理にかなった食材になります。
馬乳酒(アイラグ)など伝統の飲み物
夏のモンゴルを代表する飲み物が、馬乳酒アイラグです。馬の乳を革袋などで発酵させた飲み物で、ほのかな酸味と微発泡が特徴です。アルコール度数はビールよりも低く、子どもから大人まで日常的に飲まれています。
アイラグは夏に馬の乳が出る時期だけ作られる季節の飲み物です。発酵が進むにつれて味が変化し、初夏はまろやか、秋口にかけては酸味と刺激が強まります。遊牧民のゲルを訪れると、来客への歓迎のしるしとして碗に注いで振る舞われます。
乳茶のスーテーツァイも日常に欠かせません。煮出した茶に乳と塩を加えた塩味のミルクティーで、一日に何度も飲まれます。こうした発酵乳や乳茶の文化は、モンゴルの食と遊牧の知恵が凝縮された伝統です。発酵乳の栄養や製法については、ブリタニカ百科事典のモンゴル文化の項でも背景を確認できます。
旅行中に味わいたいおすすめグルメ
せっかくモンゴルを旅するなら、定番と季節限定の両方を押さえたいところです。ウランバートルの食堂では通年でボーズやホーショールが味わえますが、アイラグやホルホグは地方の遊牧民キャンプでこそ本場の味に出会えます。
旅のプランを立てるときは、訪問時期も意識してみてください。乳製品やアイラグが豊富なのは夏の草原で、肉料理が中心になるのは冬です。季節ごとの魅力はモンゴル旅行のベストシーズンはいつ?月別ガイドで詳しく解説しています。
食文化を安心して体験するには、現地事情に詳しい手配が心強い味方になります。Mongoliatravelでは、遊牧民のゲルでアイラグやホルホグを味わう文化体験を、日本語ガイド付きで案内しています。言葉の壁を気にせず、遊牧民の暮らしに触れながら伝統の味を楽しめるのが利点です。草原の一食は、モンゴル旅行の忘れがたい思い出になるはずです。まずは関心のある季節とエリアを決めて、味わってみたい料理を旅程に書き込むところから始めてみてください。